昔の人は鳥や獣と一緒に自然の中で暮らし、寒い時には体を動かして寒を避け、暑い時には物陰に入って涼を取り、内的には感情のもつれなく、外的には立身出世の欲望もない。
生活がこのようであれば、外邪が人体に入りこむこともなく、薬物で体内の邪を除いたり、鍼やメスで外邪を追い払ったりする必要もない。
したがって昔の治療は、精神的暗示を与えて気分を変えるだけでも病気は治ったのである。
ところが今の世の中はそうではない。精神的な憂虚は内臓を損ない、過労は肉体を蝕んでいる。
また四季の自然に従わず、寒暑の養生法に逆らっているのだから、賊風、虚邪に侵されて、内は五臓脊髄まで傷害し、外は耳目口鼻肌肉皮膚を損なう。したがって、病が軽くても治りがたく、大病であれば助かる見込みもない。
(移精変気論篇第十三)
「移精変気論篇第十三」の今の世とは、今から二千年以上昔のことです。
いつの時代も健康のために必要とされる条件は同じなんですね。